春を思わせる陽気となった3月1日。スーツ姿の学生たちが続々と向かった先は、来年3月卒業の大学生らを対象にした会社説明会です。
政府が要請する就職活動ルール上の解禁日を迎え、就職活動が本格的に始まりました。5日には東海地方ゆかりの企業約100社が参加する合同説明会が名古屋駅そばのビルで開かれました。経済団体と連携して説明会を開いた愛知県の担当者はーー
「実際に愛知県内の企業でも人手不足は明らかで、売り手市場が続いている。企業説明会を通じて企業研究を進めてもらい、マッチングにつながればと思う」(愛知県 労働局就業促進課 鈴木健悟さん)
マイナビの調査では、前年と比べた採用環境が「非常に厳しくなる」と答えた企業は26.8%で、去年より4ポイント増えました。「厳しくなる」と答えた企業も含めると、全体の8割近くが採用に苦戦すると予想しています。
一方の学生にとっては有利となる「売り手市場」ですが、企業選びではどんなところを重視しているのでしょうか。
「福祉分野で就職先を探している。一番はやりたい仕事をしたい。その中で自分が行動しやすいかや会社の雰囲気を重要視して探しているところ」(参加した就活生)
「就職したい企業があまり決まっていなくて、いろんな分野をちょっとずつ知っていけたら。企業がいっぱいあるところに自分で出向いていろんな話を聞いた上で働きたいと思える職種を見つけたい」(参加した就活生)
一方、3月解禁にも関わらず、学生からはこんな声がーー
「就活を始めたのが去年の夏から秋くらい。選考が進んで内々定が1社ある」(参加した就活生)
「もう内定を取ったとか、就職を3年生で決めたという話を耳にする。焦りはやっぱりある」(参加した就活生)
近年の就活は「早期化」
就職活動をめぐって近年の傾向として見られるのが、就活の「早期化」です。
リクルートの調査によりますと、2026年卒の大学生の就職内定率は2月1日時点で39.3%。前年の同じ時期より15.4ポイント増え、約4割が卒業の1年以上前から内定をもらっていることになります。
政府は会社説明会を3月1日から、選考を6月1日から始めるよう求めていますが、強制力はありません。
「人手」が欲しい企業が採用活動を早める動きもあり、ルールはなし崩しになっているのが現実です。
説明会の参加企業は、この状況をどう考えているのか、聞いてみると…
「去年10月ぐらいに(内定を)持っている子もいると聞いていて、内定出した後もいかに1番にもってきてもらうかがちょっと大変だと思っている」(クマガイ特殊鋼 総務部 熊谷妃呂子 部長)
「正直、大学の26年卒だと3~4月が勝負」(クサカ 採用担当 増田貴洋さん)
売り手市場への対応が求められる中、条件などを見直したという企業も。
「初任給は年々上げています。ほとんど給料ではじかれていますので、給料というところは中小企業はきついが、上げていかないと人はとれない」(PAP 採用担当 金澤哲男さん)
企業も人材確保へ焦り
こうした動きについて就活に詳しい企業の担当者は「人材確保」への焦りが背景にあるとみています。
「人手不足を背景とした売手市場化がより進んでいるところから、企業側としては競合他社より早く優秀な学生と出会いたいという意識が動いているかなと」(マイナビキャリアリサーチラボ主任研究員 井出翔子さん)
一方、あまりに早い就活は「ミスマッチ」をもたらす懸念も。
「(大学の)1~2年生が教養区分、3~4年生でようやく専門課程が始まっていく段階。自分の専門性が磨かれていないので、(結果的に)やりたいことが分からないとか、思っていたのと違うという就職になる可能性が高まる」
「(早期化は)企業側にとってもいいことではなく、表面的なPR活動になると内定辞退とか入社後も早期離職につながって、結局人出不足の負のスパイラルにつながることが考えられるので、過度な早期化は課題があるのかなと思っています」(井出さん)