Review 『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』

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無題

ROUTE66のように象徴的ではなく、さして大きいわけでもない。けれどもここは『SACRO GRA』”神聖なるGRA”なのだ。

 

ローマを取り囲む環状線GRAはさながら旧き都市の城壁で、境界の危うさを湛えながら、うごめくものたちの魅力を醸している。

たとえば、車上生活をする2人の中年娼婦は、口癖のような悪態と毎度のうんざりな鼻歌ばかりで冗談のような人々。
陽気なわけじゃない。警官だって素通りするのだから。

年頃の娘とモダンな集合住宅に住む老人は、理をなくした賢者のように老いている。
四六時中娘を思い、娘に見守られながら幻想を生きている。

窓の外には古城があって、ホテルのフロントのように丁寧に客対応をする老人がいる。
まさか、別の部屋で優雅にバスタブにつかり、貴族のマントを羽織る貴人が同一人物だとは思いもしない。

牧草地を羊の群れが優雅に駆けてゆく。そばのヤシ林には、マイクをヤシに差し込んでは録音する老人。
その顔は都会に住むどのサラリーマンよりも切実な使命感に満ちている。

そして彼らの生活をよそに、宇宙服姿の救急隊員が、環状線の周回軌道をぐるぐるとまわる。

 

ジャンフランコ・ロージ監督は、これまで放っておかれたローマの周縁に興味を持った。歩いては友人を増やし、長い日々を共に過ごした。あるとき、カメラを構えて数時間だけ回す。そこに自分がいる空気もひっくるめて映しこんだ。

よそ者にしか見えない空気と、土地に肉薄するものだけが捉えられる確かなものが混在して、風景をファンタジーに変えた。
『海炭市叙景』で熊切和義が表現した函館や、『Helpless』からはじまる3部作で青山真治が見せた北九州のように、長い息を吐きたくなるような、静かで、少しだけ重い空気。

なんとなくうわついた気持ちを、重力でしっかりとつなぎとめてくれる心地よい作品だった。

KBCシネマにて、10/24(金)まで公開中。スタートは16:10。

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