【REPORT】爆音映画祭2015 in 福岡

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あっという間に1年が終わった。

年暮れになると、いつもは目の端にあるような伝統行事が一気に色めき立ち、季節の重みで加速した時間に連れられて私たちは一気に山を越えてしまう。これぞ祭りだとつくづく思わされつつ、年の暮れにしがみついてなんとか心ある年越しをしたいとあがいているのがこの記事である。

■ “絶妙な” 爆音
今年は爆音映画祭の重みで一気に年暮れが進んだような気がする。
前夜祭の『ブルースブラザーズ』は会場の外で音を聞き、初日は途中入場で『エクソシスト2』のイナゴにもはや浄化されんばかりの勢いで圧倒された。すでになにか大変なことが起こっていた。今年は福岡から世界に名を馳せるサウンドシステム「BLACK BELT」が全国の爆音で初めて参入しており、彼らの圧倒的機材とboidの樋口泰人さんの音づくりの見事な競演が繰り広げられていたのである。
「デカい音は正義だ」とはMIKADO吉井の格言であるが、爆音映画祭は、数本まとめて観ることでその言葉の意味が染み付いてくるようなところがある。当然、ただ大きなスピーカーを入れてボリュームを上げているだけでは、映画祭など成立しない。左右、中央のスピーカーそれぞれから出る音。台詞とBGM、環境音。映画の音にはさまざまな要素があり、監督によって音のつくりがさまざまに違う。
これらが樋口さんによって”絶妙に”大きくなるのが爆音映画祭でかかる映画なのだ。もちろん、大きな音の衝撃や映画体験の劇的な変化は1本見れば十分に起こりえるかもしれないが、アクションもラブストーリーもドキュメンタリーも、さまざま観れば一層醍醐味が染みてくるし、何より、ほぼ確実に「もっといい映画」になる。しかも「デカい音は正義だ」と胸を張れるようになるのだ。(なったほうがいい)

■ 観客でなくなる恐怖
ほんとうはどの作品にも触れてみたい。デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』は、爆音でないと下手をすれば気付かなかったであろう不快な都市の音が延々と流れていた。この音がラストへの筋を決定的に運命づけており、逃れられぬ絶望をどこまでも深めていく。
『地獄の黙示録』は案外発見だった。イメージ通りの兵器の爆音になすがままの前半を過ぎると、徐々に奥地へ潜入していく主人公と共に熱帯の音に包まれてどこかまどろむような狂気に誘われた。ラストシーンでようやく正気を取り戻した時には背筋がぞっとして冷や汗をかくほどで、ほんとうに恐ろしい(素晴らしい)映画体験であった。

■ 音に触られる高揚感
恐ろしい物ばかりではない。今年最大の集客だった『恋する惑星』では、ラブストーリーの醍醐味である2人のもどかしい距離感を爆音が一気に増幅した。路地を走る足音や男が急に帰宅して開いたドアの音など、爆音で観ていない人にはおそらくなんのことやらさっぱりなポイントが私の意識に昇らぬところで物語を彩っていたことに気づき、同時に全く違う体験へと引っ張られる。また、作中でも大音量でかかっている「愛のカリフォルニア」を文字通り大音量で聞けるところでは、日頃DVDやテレビでいかに自分の都合で作品と向き合っているかを再認識させられた。今後このシーンを大音量でない環境で観ても、映画の世界からはじかれたような感覚にしかならないだろう。
『THE COCKPIT』は爽やかだった。打ち込むことで止められる時間というものがあって、ここで溜めたエネルギーでこそ僕らはグルーヴするのだと知った。通勤する人々を前に朝帰りをするときのような気持ちで過ごすエンディングは、誰もが音圧に体の組織を動かされて、願いを通り越してやや投げやりに完成を待ったアレを口ずさんだはずだ。

■ 音がシステムを乗り越える
最後に1本、最重要事項を伝達する。『サウダーヂ』は大傑作である。
そんなこと知ってるわ、という人の白い目が頭の隅に浮かぶが、ともかく、私は福岡で2度目の上映機会にして、ようやく『サウダーヂ』を観ることが出来たのだ。「ここではないどこかへ」というあらゆる映画の醍醐味をメインテーマに据えた王道の映画でありながら、今しか撮ることのできない流れ行く日常の映画でもある。「怠惰にでもならないとうんざりしてしまう日々の中で病人のように希望を見つめる夢の様な音」と、「夢が夢であったと知らねばならないところまで踏み出してしまった時の外の喧騒、内の静寂」が同時代を生きる心をわしづかみにし、歯を食いしばらせる。時代を生きずに社会のシステムに乗ることで済んでいる無関心な人々にはともすれば何も起こっていないように、自業自得の茶番のように見えるかもしれないが、爆音で先入観やアイデンティティを吹き飛ばせば物語は誰にでも立ち上がる。日本語には訳し難い「サウダーヂ」という人の性を、映画館という逃げることも止めることもできない場所で伝えるために出来上がったかのような、日本映画史上に残る大傑作だ。

■クラウドファンディング「怒りのデスロード方式」
そして『サウダーヂ』を撮った空族が現在撮影中の次回作『バンコクナイツ』は、撮影とクラウドファンディングを同時にはじめるその名も「怒りのデスロード方式」で今この瞬間もタイで撮影を敢行している。期限は明日12/29まで。1000万円の目標金額であと30万円ほどだ。必ず一票、お金を投じよう。もう、観客で居てはいけない。それは他でもなく、残し、伝えることが難しいこの時代の映画をつくる試みであり、私たちに先駆けた世界への挑戦であるからだ。きっと来年の爆音では最高の形で投資の対価が戻ってくるはずだ。

 

 

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